看取りケアの対象は利用者本人だけでなく、利用者を支えている家族にも及びます。訪問介護などで看取りケアに関わる介護職は、訪問初日から、家族を含めたケアをする視点を持つことが大事です。終末期を支えている利用者家族は、精神的、肉体的ダメージをかなり受けています。利用者の状況が緩やかとはいえ、刻々と変化していくことに対応しきれず疲弊していることも多いです。そして、看取りケアですから、利用者の死は避けられないことであり、利用者が亡くなった後も、家族の生活は続いていきます。それだけに、看取りケアに関わる介護職は、心残りのある死、予期せぬ死にならないように援助し、少しでも納得感をもって最期の時を迎えてもらうよう仕事をすることが大事です。
看取りケアにおいて、傾聴のスキルは非常に重要になります。利用者に対する傾聴姿勢と同様に家族に接することになりますが、介護に関する具体的なアドバイスを求められる機会が多いのが特徴です。たとえば、排泄介助が大変という相談を受けることもあり、その場合、ポータブルトイレの活用や、手すりの導入などを提案できるように準備しておくことが大切になります。専門職だからこそできるアドバイスは、利用者家族の負担を軽減し、よりよい看取りケアにつながっていきます。加えて、理想的な看取りイコール、家族みんなに囲まれた最期とは限りません。家族に迷惑をかけないことを優先した人もいるため、利用者本人とその家族の価値観をしっかりと聴き取りしておくことも大切です。